平成26年10月12日 キッコ・パスツール氏とロマン・ガルシア氏のスペシャルレクチャー 於:浜松市市民協働センター 2階第1研修室
キッコ・パストゥール氏、ロマン・ガルシア氏浜松レクチャー
マジック大国スペインより、二人の新星、キッコ・パストゥール氏、ロマン・ガルシア氏を招き、
桂川新平氏のナビゲーションで日本初公開の新作をレクチャーしてもらいます。
新たなスペインスタイルを見るチャンスです。お見逃しなく。
キッコ・パストゥール
スペインを代表する若手プロフェッショナルマジシャン。
レギュラーカードにこだわった流麗で繊細なカードマジックには定評がある。
2006年FISMストックホルム大会、クロースアップカード部門3位入賞。
ロマン・ガルシア
クロースアップからステージマニピュレーションまで、幅広いレパートリーを持ち、
カジュアルスタイルのイリュージョニストとしても知られる天才クリエイター。
日時: 2014年10月12日(日曜日) 15時開演(18時頃終了予定)
場所: 浜松市市民協働センター(浜松市中区中央1丁目13番3号) 2F 第1研修室
会費: 社会人 5,000円 / 学生(大学生以下) 3,000円
☆レクチャー内容(順不同:タイトル適当)
第1部 ロマン・ガルシア
1.「トライアンフ」…2回リフルして完全に裏表が混ざっている事を見せて客の選んだカードだけ表に、ところが次の瞬間
客の選んだカードのマークのA〜Kまで順に表向きになっており、客の選んだカードは抜けているが…。
2.「The Spitted Card」…2枚のテーブル上のJokerの間に客のカードの破片が飛行。次の瞬間破けていたカードが元に戻る。
3.「ワイルドコイン太陽と月」…銅貨4枚とカップ。1枚ずつ銅貨が金貨に変わっていく。金貨と銅貨が左右の手、客の手の中で瞬間に入れ替る。
そして、太陽に見立てた金貨と月に見立てた銅貨。前後に持つと大きさが変わっていく、大きな太陽に。
4.「インデックス」…Jokerの裏にA〜Kと大きな○、そしてダイヤ、クラブ、ハート、スペードのマークがマジックインキで書かれている
客にカードを選んでもらい、Jokerの裏の数字やマークに触れると丸の中にマークが移動してしまう。
5.「ハリーフーディニー」…カードのJ4枚の裏に客のサインをしてもらう。壁に見立てた半透明のハンカチの下から
ハンカチの上にあるフーディニーの写真の裏に1枚ずつサインされたカードがエスケープしていく。
休憩
第2部 キッコ・パスツール
1.「カードの出現」…A4枚を見せ客に好きなマークを言ってもらう。違う選び方でもう一度マークを選ぶ
まず、そのマークのカードを2〜Kまで凄い技術で(多分)順に出していく。客の選んだマークもそうでないマークも
2〜Kまで順番に並んでいる。
2.「巡礼者」…A4枚と絵札4枚を取出し、絵札4枚を手元にA4枚をテーブルに置き、手元の絵札が1枚ずつ裏向きになって全部裏向きになる、
そしてその4枚を表にするとテーブルにあるはずのA4枚になっており、テーブル上のAは絵札に変わっている。
3.「Four Cards Repeat」…客に4枚のカードを選んでもらう、4枚数えて1枚だけデックに戻しても、残りはやはり4枚。
テーブル上の客の選んだカードが最後に手元に残る。
4.「Elrond's Assembly」…A4枚を客に出してもらう。関係のないカードを何枚か取出し、放射状に並べたAの上に3枚ずつ置いていく。
Aが一枚ずつ消えて真中に集まる。当然消えた組のカードは3枚。手元には4枚のAしかない。
5.「アウトオブディスワールド」…客が裏向きのカードを無作為に2か所に分けるが、総て赤と黒に分けられている
6.「トライアンフ」…客が選んだカートを中に入れ完全裏表が混ざっていることを見せて手を撫でた瞬間からカードが客のカードを除き全部裏向きに。
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その後のウナギの夕食は同行していませんので詳細は不明です。
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次の日、東京へ出向き「上口龍生」師のプロデュースでレクチャーが開催されました。
上口龍生師の驚嘆のレポートを師の許可を得て掲載いたします。
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10/13『スペイン人レクチャー』無事終了しました。
嵐の迫る東京に定員10名集まって頂きありがとうございました。
桂川新平さんにご紹介いただいたスペイン人兄弟、キッコ・パストゥールとロマン・ガルシアのお二人のレクチャー、想像以上に素晴らしかったです。
正直、凄すぎて自己嫌悪に陥りました。
無名とも言えるこの二人がこれだけ凄いとするならばどれだけスペインのレベルが高いか想像するだに恐ろしいです。
私が知る限り、2,30年前は、スペインよりも日本のレベルの方が上だったと思います。残念ながら今はもう追い越されてしまいました。
ステージでは韓国や中国に追い越され、クロースアップでもスペインに大きく差をつけられたのではないでしょうか。
薄々それに気がついていながらも、間近でそれを体感すると恐ろしくなります。
キッコに質問して確認したのは、やはりアスカニオの影響です。
アスカニオ師以前と以後ではまるっきり違うというのです。
そしてそれを受け継いだタマリッツがスペインのマジック界を発達させたのでしょう。
質問したことは山ほどありました。
しかし、それ以上にマジックが素晴らしく、単純にレクチャーだけでも時間は足りませんでした。
5,6時間ほどがあっと言う間でした。
まず、最初に演じたのは、ロマン・ガルシアでした。
トライアンフから始まりました。
一見普通のトライアンフですが本当に混ざっているところが見せられるのがミソです。
しかしそこからプレイイットストレートとなっていてびっくりです。
続いて演じられたのは観客の選んだカードのコーナーを口で破き、まるで吹き矢のように二枚のジョーカーの間に挟んでしまうというものです。
もちろんコーナーと選ばれたカードの端は一致します。
さらにその端が不思議にも元通りになってしまうのです。
ビジネスマージャーの原理を巧みに組み合わせています。
ワイルドコインはゴールドフィンガーのプロットをとても不思議に見せてくれました。
もっと言えばデビットネイバーズの錬金術師のバリエーションでしょうか。
ワンダラーサイズのカッパーコインを軽く扱って次々とゴールドコインに変化していくさまはまるで魔法です。
続けてのサン&ムーンも大変ビジュアルですしフィニッシュも逸品です。
純粋なクロースアップとしてだけではなくサロンでも通じる破壊力があると思いました。
今回お客様方には最も不思議で衝撃だったのはシルクを貫通するカードでしょうか?
マイケルアマーがコインスルーシルクで使うような透けて見えるハンカチを使います。
サインさせたカードが一枚ずつビジュアルに消失して一ヶ所に集まってくるのです。
カードマジックとしてもビジュアルなのが、インデックスという作品でした。
これはジョーカーの裏にAからKまでのナンバーと四つのスートが油性ペンで書かれており、目の前で観客の選んだカードの文字が動く、というものです。余りにもクリアーな演技に現象が不思議すぎます。至近距離ということも改めさせることができるということも驚きでした。
演技だけでも20分ほどありました。
みんなの要望の高い上記のシルクを貫通するカードの解説となりました。
この演目自体は、新聞紙や透けないハンカチを使う古典的プロットですが、
見える状態で行うことでこんなにも新鮮に感じさせてくれるとは思いませんでした。
ワイルドコインもインデックスも解説してくれました。
全部解説しても構わなかったのでしょうが、時間が足りません。キッコに登場してもらいました。
ロマンによって出来上がっていた雰囲気が、ガラリと変わりました。
キッコはプロだと感じさせてくれたのは、まずその空気を変える力です。
観客から借りたデックを使ってのみ行うと言いながら、曲を掛けエースと赤の絵札を抜き出します。
リセットのような事をやるのだろう?と想像させます。
エースを裏向きにして四枚をテーブル上にディスプレイしますがそれ自体がアーティスティックな並べ方で美しい。
気が付けば四枚の絵札は一枚ずつ裏向きになっていきました。
そして四枚全部が裏向きになってから一枚ずつ表向きにすればそれがエースになっているのです。
もちろんテーブルの四枚は絵札となっているのです。日本におけるタイトルは「巡礼者」、なんかお洒落です。
続いてもほとんどおしゃべりをせず、デビットウィリアムソンのワールドフェイマススリーカードトリックをさらりと演じていました。
これは技術的なことばかりではなく、その演技が最も難しいのです。
原案のプロットを全く違ったメソッドで行うことによって魔法のように見えました。
スローモーションフォアエースも、ちょっとしたディスプレイが斬新で単なるTフォーメーションもこうすれば新鮮な気持ちにさせてくれるのかと驚きましたが、その不思議さもマクドナルドフォアエースを凌ぐもので感心しました。
これが借りたデック、つまりノーマルデックなのかと思うと余計に不思議なのです。
そしてトライアンフ。またもやトライアンフなのですが、テーブル上にスプレッドした表向き裏向きのバラバラな状態から、
手を撫でるだけで本当に全部が裏向きに変わるさまはCGのようです。
これもまたノーマルデックなのです…。
このキッコが演じると全てがアートに見えます。
私はクロースアップは演芸であり楽しませるものだと思います。
しかし彼の演技を見ると芸術作品として昇華出来ることを見せつけられたのです。
異能なキャラクターも過剰なフラリッシュもいらないのです。
かといって技術を前面に押し出しているわけでもない。
こんなにもナチュラルに人を惹きつけることが出来ることが驚異です。
言葉もギャグもキャラクターも頼らず純粋にマジックだけでも出来るのだ、と感動しました。
お客様の要望が最も高かったフォアエースのレクチャーとなりました。
このキッコの考え方のエッセンスが詰まったものということです。
一つ一つの動作も心理学的に考えられ計算されています。
難しいテクニックを使うだけではなく、大胆で良いところは極端に大胆に行います。
だからこそ全てにテクニック臭さがないのでしょう。
トライアンフもレクチャーしました。
今度はあまりの難しさに閉口しました。
ロマンのレクチャーに再び戻り、いくつかの作品を見せてもらいました。
特にライプチッヒのシンパセティックカードを進化させポールカリーの原理、ギルブレイスプリンシプルなどを組み合わせ手順化させた作品は見事でした。
「ラテラルシンキング」という作品もとても考え抜かれたものです。
原理自体はエルムズレイのアイディアをベースにしていますが、ディングルなどが行うシンキングカードの古典的カードアクロスのアイディアを組み合わせることでより一層不思議にさせています。
三人の観客のカードを当ててゆき最後にデックが消失してしまう、という作品もミスディレクションが巧みです。
この二人に驚かされるのは、表面的な深いテクニックを持っているだけではなく、心理的な老獪なテクニックさえも持ち合わせていることです。
なぜ、ここまでミスディレクションが巧みなのか、凄いことです。
再び登場したキッコが演じたのは、これも古典であるアウトオブディスワールドでした。
これの改案であるポールハリスのギャラクシーという作品があります。
私は原案のカリー版が好きです。ギャラクシーには何とも言えない違和感があるからです。
改案が必ずしも良いわけではない例でしょう。
ところが、このギャラクシーにあった違和感を取り除くいたキッコは天才です。
こんな大胆なことで解決してしまうのか、と思うとそのほうが驚きです。
アスカニオフィーリングというものが身体に染み込んでいるのだ、とキッコは言います。
観客と合わせ鏡のように行うフォアオブアカインドがありました。
これはきっとそれほど難しくないのかもしれません。
しかし、演出がとても印象的で一般客にはとても不思議な気持ちにさせてくれるものです。
気が付けば、もう18時を過ぎていました…。
本当はもっと質問やディスカッションを中心に行うはずでしたが、それ以上に彼らのレベルが高く、レクチャーだけでも充分にその奥深さが伝わってきました。
受け入れるこちら側は質問するにもディスカッションするにもまだ不十分でしょう。
私自身はとても刺激になりました。
これからのマジック界では、スペインの考え方などが世界標準になると思います。
スペイン式を学ぶことは必須になるでしょう。
彼らの演技を体感したことで良い影響を受けたと思います。
そして参加していただいた皆様にとっては、一生の思い出となったことでしょう。
ぜひ、また彼らの演技を見てみたいと思いました。
今回の企画の立役者である桂川新平さん、そしてキッコさん、ロマンさん、来て頂いたお客様方々どうもありがとうございました。